2020年6月18日 3:54 pm

 公認会計士・税理士の方から、医療法人設立にあたり不動産鑑定のお話をいただきました。出資目的物件は、名古屋市から少し離れた幹線道路沿いの借地権付き建物(事業用定期借地権)である診療所です。

 会社法上では、設立時の現物出資の場合、原則として裁判所が選任した検査役による目的物の調査が必要となります。しかし、この検査役の調査が不要になる場合がいくつかあり、そのひとつが、現物出資財産が不動産であって不動産鑑定士の鑑定評価を受けた場合です。また、出資目的不動産は貸借対照表に資産として計上し得るものに限ります。

 ただ、今回は医療法人設立に関するものであり、設立手続きの中心となっている公認会計士・税理士の方にご指導いただきながら評価作業を進めました。自分なりに確認したところ、医療法人設立を規定する主な法律等は医療法と医療法施行規則であり、財産に関して「医療法人は、その業務を行うに必要な資産を有しなければならない。」とされています。また、医療法人設立のために県に提出する必要書類の中に、財産目録、財産目録明細書、不動産評価額の根拠を証明する書類(不動産を拠出する場合)が挙げられています。なお、医療法人設立時の不動産出資には譲渡税が生じる場合があるので注意が必要です。

 今回の鑑定評価で特に丁寧な説明を要した点は、借地権の評価のところです。医療法等には明確な規定はないものの、貸借対照表に資産として計上し得るものというのが現物出資の基本要件であると考えたからです。借地権は建物を所有するために不可欠の債権であるものの、必ずしも価格として評価されるとは限りません。本件の場合も、周辺の相場より高い地代で土地を賃借していることを含め総合的に判断し、借地権の部分についてはゼロの評価となりました。結果として借地権付き建物の鑑定評価額が建物のみのものとなったことについて、公認会計士・税理士の方にはしっかりと説明をしました。

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