2020年6月7日 7:16 pm

相続が発生し、不動産の価格について意見が合わないことから、名古屋市内の貸しビルAと貸しビルBの2物件について評価依頼がありました。

2年前にお母様が亡くなられ、長男、次男(依頼者)、妹の3人が相続人、未分割申告は済ませ、相続財産は現預金等のほか貸しビルAと貸しビルB。両貸しビルとも、母、長男、次男の共有名義(1/3ずつとはなっていない)。

遺産分割の流れとしては、長男と次男が不動産、妹が現預金等となりそうです。長年にわたり、貸しビルAを長男が管理、貸しビルBは次男が管理しています。貸しビルAは旧街道(県道)沿いの私鉄駅近物件、貸しビルBは地下鉄駅に近く新築マンションがどんどん建設されている好立地物件。長男と次男の間で、貸しビルBの評価は倍違っているとのことでした。

2物件とも鑑定評価自体は難しいものではありませんでした。ただ、母の持ち分を上手いこと配分し長男と次男で相続したら、貸しビルAの次男持ち分と貸しビルBの長男持ち分について交換の特例が受けられるかもしれないと考えました。

交換の特例とは、Xさんの土地とYさんの土地(あるいは、Xさんの建物とYさんの建物)がほぼほぼ同じ金額(差が20%以内)なら、譲渡所得課税が随分と少額(同額の交換ならゼロ)となるものです。

そこで、土地価格は私が評価したもの、建物は固定資産評価額を使って計算してみたところ、土地も建物も持ち分が等価となる配分の仕方があることがわかりました。念のために税務署に確認したところ、交換の特例は持ち分同士の交換でも可能なこと、相続と交換の特例は別ものなので、これが恣意的で不可になることはないとのことでした。ただし、いきなり相続登記を済ませて交換を進めるよりは、遺産分割協議にあたり事前に税務署へ相談に行くことを勧められました。

鑑定評価の依頼者には、不動産の共有持ち分状態はあまり好ましくなく、今回の相続は、最小の費用でそれぞれの貸しビルを単独所有にするチャンスであることを説明させていただきました。今のところ税理士さんからは交換の特例の話はなかったそうで、3年以内に分割を済まさないと小規模宅地の特例も使えなくなるので急がないといけないとおっしゃっていました。

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